不起訴処分告知書
私選の刑事弁護事件で、被害者との間で示談が成立し、無事起訴猶予で釈放されることになった。
その依頼者が色々調べてきて、不起訴処分となったことの書面をとってもらえませんかとのことだったので、不起訴処分告知書を検察官に請求することになった。
不起訴処分告知書の根拠は、刑事訴訟法259条である。
「検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。」と規定されている。
したがって、まあ条文通りに読めば、検察官は口頭で、起訴猶予にしたよと言ってもいいことになるが、法務省訓令によって、「不起訴処分告知書」という文書によって告知するとされているので、そのような申請が出来るわけである。
一般には、不起訴になったことの書面が必要となる場面はほとんどないので、申請してほしいという依頼者は少なく、いままで申請したことはなかった。
申請書を起案したので、明日これで申請してみようと思う。
労災給付と損益相殺
労災給付と損益相殺についてちょっと調べたので備忘録的にメモ。
・労災給付は、各保険給付と「同一の事由」については損害の填補がなされたものとして、損益相殺の対象となり、休業補償給付と同一の事由の関係にあるのは、消極損害(逸失利益)のみであり、積極損害(入院雑費、付添看護費はこれに含まれる。)及び精神的損害(慰謝料)は同性質とはいえない(最高裁昭和62年7月10日)。
・過失相殺がある場合は、過失相殺後、労災給付を控除する(最高裁平成元年4月11日)。
・労災給付と同性質であるとして、損益相殺をする場合は、元本に充当されたものとし、給付日までの遅延損害金は考慮しない(最高裁平成22年9月13日)。
治療費以外の積極損害(文書料、通院交通費、入院雑費、通院交通費、付添看護費、付添人交通費)について、労災の療養給付金と同一の性質とすると明確に判示した最高裁はないようであるが(もっとも、上記最高裁昭和62年7月10日は、かっこ書きでこれらも療養給付と同性質であうることを示唆する)、下級審では、これらも同一の性質とするものがある。
・療養給付金は、その給付の趣旨目的に照らし、過失相殺後の治療費、文書料、入院雑費、通院交通費、付添看護費及び付添人交通費の合計額の填補に充てられる渡海するのが相当である(東京地裁平成24年7月17日)。