皇位継承の勉強

このたびの陛下の即位に際して、皇位継承について調べておこう。

 

まずは戦前の帝国憲法下から。

2条「皇位皇室典範の定むるところにより皇男子孫之を継承す」

ここから導かれるのは、①世襲主義、②男系主義、③法定主義、④皇室自律主義。皇位継承天皇の意思とか臣下の権力者の意思とかで決めるんじゃなくて法律で決めましょうと、ただ、男系世襲主義は絶対ですということです。もっとも、その法律は議会の干渉を受けずに定めます(74条1項「皇室典範の改正は帝国議会の議を経るを要せず」)

 

男系主義については近年女性天皇の議論があるところです。

歴史的に女性天皇は存在しますが、女系は存在しません。女系とは、現在でいえば、愛子内親王殿下の子供が天皇になることです。つまり、歴史の前例からすれば、中継ぎ的に愛子内親王殿下が天皇として即位することはあっても、次の天皇は、男系子孫に戻るということになります。

もっとも、戦前の皇室典範は、「男系の男子」とし、現在の皇室典範も「男系の男子」としており、これは、過去の女性天皇の存在はあくまで例外的なものであり、今後の原則にすべきではない(から禁止する)という発想に基づいています。

 

女性天皇について議論する場合は、女系まで認める趣旨なのかどうかがポイントになります。女系を認めないのであれば、歴史的前例の範囲内なので、許容する余地があるのかもしれません。しかしながら、女系を認めるとすれば、日本の歴史始まって以来の変革をもたらすことになりますので、それ、男女平等みたいな近年出てきた価値観に基づくだけで、簡単にやっちゃっていいんですか、と思います。

日本の歴史を見れば、社会の価値観はいろいろに変わり、社会は少しづつ発展してきましたが、その中でも(戦争に負けても!)変えてこなかったものを今変えるのかあという怖さがあります。どうも、人類の発展はヨーロッパ市民革命以後から始まったように考えている人が多いようで、そういう人は、それ以前の歴史に対する尊重はなく、そんなものは過去の遺物なのかもしれません。

 

僕は、過去の遺物は捨ててしまおう、という考え方に抵抗があって、というのも、先の世界大戦は、進歩的思想に基づくナチや日本が、旧社会の遺物たる英米に敗れたものと位置付けられるからです。当時の書かれたものを読むと、だいたいナチやソ連を進歩的思想に基づく国家体制と位置づけて褒め、英米を旧社会の遺物としてこき下ろすものが多いです。だからこそ、日本はソ連と中立条約を結び、ナチと同盟を結んだわけです。

結局、進歩側は敗れ、大量の人間を殺して国土はめちゃくちゃになり、他方で、過去の遺物を保持する側の方が、国民の権利を尊重し、国を守ったという歴史的事実があり、この事実から目を背けることができません。

 

話を戻すと、今回の皇位継承について、最も疑問だったのが、なぜ歴史上の言葉である「譲位」ではなく、「退位」特例法としたのかということでした。

読売新聞の5月1日付の解説によれば、天皇の意思による譲位は、日本国憲法4条「天皇は、この憲法に定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。」に抵触するおそれがあるためとされていました。

しかし、上にみたように、皇位継承の法律主義(皇位継承は、皇室典範に基づいて行い、天皇の意思に基づいて行わない。)というのが明確に導入されたのは、大日本帝国憲法下からですので、日本国憲法の4条抵触を問題にするのは、間違いではないですが、正確とはいえないのかもしれません。

 

一方、今回の皇位継承について、国民主権下であるから、天皇の意思を排除したんだという解説も見られましたが、歴史的にみれば、これは誤りということになります。

いうまでもなく、大日本帝国憲法は、国民主権ではありませんが、既に皇位継承の法律主義を導入しています。